月は東に日は西に オリジナルアフターストーリー茉理編

サイドストーリー「青いフォステリアナ」

 

 私は仁科恭子。

 蓮美台学園の養護教諭。

 それは表の立場で、実は100年後の未来から来た未来人。

 

 とある日の放課後。

 今日も保健室で、仕事をしていると・・・

 こんこんっ

 がららっ

ちひろ「失礼します」

 橘が保健室にやってきた。

恭子「あら、橘。いらっしゃい。どうしたの?」

ちひろ「あの、少し未来についてのお話をしたいんですが」

恭子「えっ?」

 橘から未来のことを話し出すのは珍しい。

 私は、保健室のドアに「準備中」の札を下げ、さらに鍵をかけた。

恭子「それで、どういう話なの?」

ちひろ「あの、実は・・・」

ちひろ「私が温室で青いフォステリアナを育てているのは知っていますよね?」

恭子「ええ」

ちひろ「その、青いフォステリアナが、マルバスに効くんじゃないかと思うんです」

恭子「えっ!?」

 突然のことで、驚きを隠せなかった。

恭子「何か理由でもあるの?」

ちひろ「はい。100年後の未来で、私の周りで生き残ったのは私だけなんです」

ちひろ「それは、私が青いフォステリアナの種を食べたからだと思うんです」

恭子「でも、それだけじゃ・・・」

ちひろ「それだけじゃないんです。1年前、茉理がマルバスにかかったときも」

恭子「えっ、渋垣も?」

ちひろ「はい。隠していたわけではないんですが、茉理と二人でいるときに青いフォステリアナの種を食べさせたんです」

恭子「でも、あのあと渋垣は意識が戻らないところまで行ったはず」

ちひろ「確かにそうですが、茉理は今も元気にしていますし」

恭子「食べてから体に浸透するまでに、意識が戻らないところまで行ったと仮定することはできるけど」

ちひろ「お願いします、先生」

 橘はいつに無く真剣な表情だった。

 ・・・・・。

恭子「わかったわ。実は、最近少し行き詰まりを感じ始めていたの」

恭子「とりあえず、サンプルに種を分けてもらえるかしら」

ちひろ「わかりました」

 

 それからは、橘の持ってきたフォステリアナの種の成分の分析をはじめた。

 半ば、信じられなかったけど、どうやら本当にマルバスに効果があるらしい。

 祐介に投与したところ、マルバスの数が減り始めていた。

 これでワクチン開発のめどが立つ。

 私は、再び橘を保健室に呼んだ

恭子「橘さん。あなたの言ってた通り、フォステリアナにマルバスを撃退する効果が認められたわ」

ちひろ「本当ですか!?」

恭子「まだ、ワクチンの理論的な外堀が埋まっただけで、これからカンヅメして実験しなきゃいけないけど」

ちひろ「じゃあ、未来は救われるんですね?」

恭子「ええ、これも橘のお陰よ」

ちひろ「そんな、私はただ・・・」

恭子「とりあえずありがとうね。これで希望が持てたわ」

 私は、決意も新たに研究所に向かった。

 

サイドストーリーを書き終えて

 唐突に始まったこのサイドストーリー。茉理が助かった私なりの理由が書きたくてつくってみました。どうでしょうか?直樹と茉理の愛の力をぶち壊すようですが、私はたとえフォステリアナを食べて助かったとしても、その最終的な力は直樹と茉理の愛の力だと思います。これは、本編の恭子エンドで、直樹が恭子のことを信じてマルバスに打ち勝ったのと似たようなものではないかと思います。賛否両論はあるかもしれませんが、私はこういう過程があったと信じています。

 それでは、再び第4話をお楽しみください。(左をクリックすると、第4話の最初に戻ります)